『「空気」と「世間」』私たちは中途半場に壊れた「世間」を生きている【読書ノート】

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こんにちは。CafuneBooks店主の池野花です。

今日紹介する本は『「空気」と「世間」 空気を読まずに息苦しい日本を生き抜く方法』です。
著者は劇作家の鴻上尚史さんです。

私は鴻上尚史さんの書く本が好きです。
鴻上さんは、普段から演劇の台本や台詞を書かれていて、幅広い年齢の役者さんやスタッフさんに自分の想いを伝えてきた方なので、読み手の心情を考えて書いている印象があるからです。

この本は2009年に講談社現代新書から出版されているので、10年ほど前に書かれていて、ちょうど「空気を読む」という言葉が一般的になってきた頃。
10年経った今も、「空気を読む」という言葉は定番化しているので、今読んでも学びが多いと思います。

この本は、「空気」と「世間」、「社会」について語っています。

音声で聴きたい方は、こちらからポッドキャストに飛べます。

「空気」と「世間」の感想

「空気を読め」というフレーズは、テレビのお笑い番組でよく聞くフレーズ。
たとえば、大物司会者が仕切る番組で若手のお笑い芸人が、その場にそぐわない事を言うと、先輩芸人が「お前空気読めよ」とツッコむという感じ。

この場合は、大物司会者が空気を握っているボスのような存在。ボスの空気を読めというのはシンプルです。
しかし、日常の場で「空気を読め」と言われたとき、本当にその空気はあるのか?空気を作っている人物がその場にいるのか?を考えたほうがいいと、鴻上さんは語る。

たとえば、大学の親睦会で初対面ばかりで自己紹介をする場面で、うけないギャグを言ってしまった人に「空気読め」というヤジが飛んだとする。
でも、初対面同士ばかりの場なので、どんな空気を読めばいいかなんて誰にもわからない。

「空気」が何を指すかは語られないので、言われた方は自分の想像力で「空気ってなんだろう」と考えるしかない。
そうすると、自分の悩みを引っ張り出して自分を苦しめることになる。「自分の話が退屈だったのかな」など

ここまで書いてきて、空気を読もうとするのは、とても息苦しいことだと実感してきました(汗)

そして、この本の中で鴻上さんは「空気とは世間が流動化したものだ」と述べています。

「世間」と「社会」の違いとは

世間を説明する際に、世間と似た言葉として「社会」が引き合いに出されます。
たとえば、電車の中でおばさま集団が数人で乗ってきた時に、一人が電車に乗り込んで全員の座席を確保したとします。
ほかに座りたい人がいても、おばさまが陣取っているので座れない。

おばさまにとっては友人が「世間」、それ以外の乗客は「社会」です。
おばさまにとっては友人以外の人は他人だからどうでもいい。

ほかの例えでいえば、電車の中で化粧をする女性。
その行動は自分を全く知らない人たちばかりの「社会」に自分がひっそりいると思っているからできる。
逆に言えば、同じ部署の人がその場にいたら、たぶんその女性は電車で化粧はしない。
なぜなら、自分のことを知っている人は「世間」だから。

このように、自分と利害関係のある人たちは「世間」、それ以外は「社会」というように、日本人は認識しているそう。

本書では、個人や社会を研究した方の論文や著書なども引用されながら、日本の「世間」の変遷や西洋との比較が語られます。

私たちは中途半端に壊れた「世間」に生きている

かつては「世間体が悪い」なんていう言葉がよく聞かれたように、日本人は村社会で生きてきた。
しかし、現代は個人でも生きていきやすくなってきているので、私たちは今「中途半端な世間」を生きている。
それこそが「空気」だと鴻上さんは語る。

たとえば、昔は「みんながあなたの悪口を言ってるよ」と言われたら、どうしたらいいんだろうと深く傷ついたけど、今なら「みんなと言っても数人くらいだろう」という心持ちになる。
少しグサリとはくるけれど。
そのグサリとする度合いが深いほど、その世間は自分にとっての重要度が高い。

私の例でいえば、一番長く勤めた会社には11年いた。社風がいい会社で、社員同士も仲が良く結束も強かったと思う。
どっぷりその環境につかって仕事をしていたので、あのとき「みんながあなたの悪口言ってるよ」と言われたら、次の日から会社に行けなくなるくらい傷ついたんじゃないかと思う。

でも、今はフリーランスになり、いくつかのコミュニティに顔を出している感じなので、同じことを言われてもそのコミュニティから去るだけだろう。

実際に、鴻上さんも息苦しい世間をわたっていくには、たとえば会社の組織だけでなく、趣味のコミュニティなどを複数もち、ゆるやかに所属することを勧めている。
(10年前に書かれていたとは思えない!)

そして、大人になるということは、「世間」と「社会」という幅をゆるやかに楽しんで生きていくことだという言葉で、この本は締めくくられています。

★こちらの本はCafuneBooksのWebショップでも販売していますので、気になる方はぜひのぞいてみてください。
特典として、オリジナルのブックカバーと栞がついてきます。
さらに、今は3000円以上のお買い上げで配送料無料のキャンペーンをやっています。

おわりに

新型コロナの感染拡大もだいぶ落ち着いてきた雰囲気ですよね。
特定の都府県以外は、今夜にも外出自粛解除されるというニュースを見ました。
21日には東京を含めた残る都府県も解除を検討するそうなので、完全な自粛モードは早ければ来週か長くとも月末くらいまででしょうか。

今まで通りになるまでは、まだ時間はかかると思いますが、完全自粛はあと1週間か2週間位だと思うので、今やるべきことをやってきたいと思っています。
なんていうとかっこよい感じですが、私はCafuneBooksの実店舗から持ってきたダンボール10箱ぐらいの本の整理を進めたいと思います(笑)

落ち着いたら実施したいと思っているCafuneBooksのイベントも、当面は開催が難しそうですが、落ち着いたら企画していきます。

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この記事を書いた人

池野 花

池野 花

人材系企業で求人広告の取材・ライティング、SEOコンサルティング会社で大手企業のオウンドメディアのコンサル・ライティングを経験。自分の取材好きを実感し、新たな出会いや経験を求めて独立。
知的好奇心をくすぐられる人を取材して、心揺さぶられたことを言葉にするのが特技。誰かの想いがうまく伝わらないときに、自分が言葉を翻訳して意思疎通ができたときに達成感を覚える。ライター業の傍ら、本好きが高じて「言葉」をテーマにした本屋カフネブックスを渋谷の隣り池尻大橋駅にオープン。「誰もが専門家」をビジョンに、自分が興味をもった専門家を招いて公開取材するイベントを開催している。